美貌録

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中秋の名月に死ぬ「源氏物語」の女

本日は中秋の名月だそうで、たしかに月明かりが美しい。中秋の名月、つまり旧暦8月15日といえば「竹取物語」を思い出す。かぐや姫が月に還ったのが旧暦の8月15日、月の美しい夜である。

 

紫式部は「竹取物語」をこよなく愛していたらしい。この物語を「物語のいでき初めの祖」と評しているばかりか、「源氏物語」にもかぐや姫のシルエットが見え隠れする。

 

雨夜の品定めに出てくる常夏の女、夕顔がもののけに憑かれて亡くなった日は8月15日。光源氏最愛の人、紫の上が亡くなった日もそう。

 

はっきり言及されていないが、8月の半ばに亡くなっているのが、源氏の正妻 葵の上。また六条御息所も8月に亡くなった。

 

源氏の母 桐壺更衣と、禁断の恋人 藤壺女御。詳しい没日は書かれていないが、夏に亡くなっている。

 

こうしてみると、かぐや姫が月に還ったという故事から、美しい人が儚く遠くへ往くイメージを重ねていることがわかる。

 

いま気がついたけど、大納言の父を持つが市井に紛れて暮らす夕顔や、親王が父だが母は正妻ではなかった紫の上など、出自は高いが身分が正統でない女は8月15日に死ぬのは、竹取の翁の娘、それも本当の娘でなく竹から生まれたという不思議な出生の女 かぐや姫と同じだ。紫式部、なかなかに竹取物語厨だな。

 

台風一過、月が美しい晩である。